最近民法の法改正が行われたことに伴い遺言書について有効な成立要件が変わったり、遺言書を国が保管し紛失などを防ぐ遺言書保管制度が創設されたりと、遺言というものにかなり大きな変革の流れがきています。
 
 そんななか今日気になるニュースをネットで見つけました。 
 人気芸人ロンドンブーツの淳さんが新たにプロデュースしたクラウド遺言サービスitakoto。
 そんなitakotoサービス動画が一般公開されたというのです。

 今日はそんなロンブー淳さんの手掛けるitakotoの概要や遺言としての効力は認められるのかについてみていきたいと思います。




➀クラウド遺言サービスitakoto・・・サービス概要

 クラウド遺言サービス「itakoto」は、大切な人へ向けた貴方のビデオメッセージをクラウド上で保管し、貴方の死後そのメッセージを相手に代わりに送り届けるというサービスです。

 ちなみにこのitakoto(いたこと)というサービス名は死者の言葉を伝える霊能者の「イタコ」と、あなたがここに「いたこと」を掛けた2重の意味を持つサービス名です。

➁クラウド遺言サービスitakoto・・・気になる料金プランは?

 今のところ以下の4つの料金プランが設定されています。

・お試しプラン・・・料金無料。1分までの低画質動画を1つ1年間保存。

・スタンダードプラン(パートナー用)・・・料金は月額120円。3分までの高画質動画を1つ保存。
                       保存期間は無制限。

・スタンダードプラン(ファミリー用)・・・料金は月額380円。3分までの高画質動画を5つ保存。
                       保存期間は無制限。

・プレミアムプラン・・・料金は月額480円。3分までの高画質動画を枚数無制限保存。
             保存期間は無制限。

⓷クラウド遺言サービスitakoto・・・ネット上の評価は?

 このロンブー淳さんの新たな試み。ネット上ではどのように評価されているのでしょうか?
 いくつか取り上げていきたいと思います。

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儲かる儲からないは別として、健康な人は自分を見つめ直す良いきっかけだと思う。死を覚悟して自分が伝えたいことがはっきりとするから、いっそのこと生きているうちに思いは伝えておこうって行動に繋がるといいな。
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とても素敵な事業だと思いました
なかなか、〇〇してくれてありがとう、や感謝の気持ちは日本人は言葉で伝えるのが苦手です
言おう言おうと思っていてもきっかけが無かったり照れくさかったり・・
動画を撮るなら手軽ですし、私もぜひ利用したいと思いました
特にこのご時世、いつ大切な人たちにお別れも言わず旅立つことになるかもわかりませんからね。
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葬祭業に携わる者とからみても、これは非常に良いことだと思います。
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こういった取り組みをきっかけに、もっと死についてオープンに話し合えるようになると良いですよね。
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 一部高齢者には受け入れずらいと言った否定的な意見もあったものの基本的にはこの試みは面白いといった意見が半分以上といったところでした。

⓸クラウド遺言サービスitakoto・・・遺言書としての効力は?

 さてではそんなロンブー淳さんのクラウド遺言サービスitakoto。
 仮に受け手への感謝の思いの他に、財産を譲りたい(遺贈したい)といった内容が動画内に含まれていた場合、法的効力を有し遺言書としての効力は認められるのでしょうか?

 実務の世界では「自分の財産を死後〇〇に遺贈したい」との遺言書をもとに名義変更手続きが行われることがありますが、この動画を根拠に不動産などの財産の名義変更手続きは可能なのでしょうか?

・・・・残念ながら答えはノーです!

 民法上遺言書は全部で7つ存在するのですがいずれの遺言書も細かく各々の遺言書として有効に成立するための要件が民法の条文で規定されています。

 そして必ず紙に一定の必要事項を記載したものが有効な遺言書となるという扱いになっています。

 いくら動画内で詳細な遺贈内容を記録したとしても遺言書という文書になっていない以上、有効な遺言書と言う扱いにはならないのです!!

 実はこのitakotoに対して否定的な意見として「遺言書として効力を有さないものである以上は全く意味のないもの」とする辛辣な意見もいくつか見られました。

⓹クラウド遺言サービスitakoto・・・まとめ

 遺言書としての法的効力は認められないitakoto。
 しかしこのサービスは遺産分割や遺贈のような財産の処分を目的としたものというよりは、「自身の思いを後悔なく相手に伝えておきたい」という気持ちの面に重きをおいたサービスであるといえますよね。

 「文書ではなくメッセージとして感謝の気持ちを遺しておきたい」と考える人にとっては、面白いサービスと言えるのではないでしょうか?