成年被後見人については従来民法上の意思能力がないものとして印鑑登録ができませんでした。
そのため成年被後見人については印鑑証明書は存在しない扱いでした。

しかしこのてんにつき総務省が『印鑑登録証明事務処理要領』の改正を行ったことで一定の要件を満たした場合には成年被後見人が意思能力を有しているとして印鑑登録が可能となりました。

この印鑑証明書は不動産登記や自動車の登録申請の際の必須書類。
はたしてこの成年被後見人の印鑑証明書はこれらの手続きにも使用可能なのでしょうか?

以下「成年被後見人の印鑑証明書は登記申請や登録申請の添付書類として使用できる?」としてまとめていきます。




➀成年被後見人に意思能力がある場合は印鑑登録が可能に!

まずは今回の総務省が『印鑑登録証明事務処理要領』の改正についてざっとみていきましょう!

成年被後見人は重度の認知症の方など事理弁識能力がないに等しい方々のこと。
そのため単独で法律行為を行う民法上の行為能力はもちろん意思表示を行いうる意思能力も有しないという扱いの元『印鑑登録証明事務処理要領』によって印鑑登録はできないものとされていました。

しかし今回総務省がこの要領を改正。

「成年被後見人から印鑑の登録の申請があった場合に法定代理人が同行しておりかつ当該成年被後見人本人による申請があるときは当該成年被後見人は意思能力を有するものとして印鑑の登録の申請を受け付けることとして差し支えない」とする見解を新たに発表したのです。

➁成年被後見人の印鑑証明書は自動車登録申請の添付書類として使用できる?

ではこの成年被後見人の印鑑証明書。
果たして不動産登記や自動車登録申請の際に添付書類として使用できるのでしょうか?
それぞれの役所に確認を行いました。

まずは自動車の登録申請についてです。
このてん所管の運輸局に確認したところ「添付が必須とされる申請人としての印鑑証明書としては使用できない」という回答でした。

但し「成年被後見人の住所を証する書類としての使用は可能!」とのことです




⓷成年被後見人の印鑑証明書は不動産登記申請の添付書類として使用できる?

では不動産登記申請の際はどうでしょうか?
このてんメールにて法務局に問い合わせたところ下記の回答がありました。

東京法務局でございます。

令和元年6月14日に、「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律(令和元年法律第37号)」が公布されたところですが、同法律の施行に伴い、登記手続に関する取り扱いは従前と変わるところはありません。
以上、回答いたします。

令和5年6月14日 東京法務局民事行政部不動産登記部門 

やはり自動車の登録申請と同じく申請人としての印鑑証明書としては使用できないという扱いのようです。

⓸「成年被後見人の印鑑証明書は登記申請や登録申請の添付書類として使用できる?」まとめ

以上「成年被後見人の印鑑証明書は登記申請や登録申請の添付書類として使用できる?」でした。
成年被後見人の印鑑証明書の発行ができるようになったとはいえあまり活躍できる場は少なさそうな感じです。

もっともこの成年被後見人の印鑑証明書。
筆者の最寄りの区役所に確認したところ外観は一般の方の印鑑証明書と全く同じで特に「この方は成年被後見人である」という文言は印鑑証明書に記載されない」とのこと。

つまりしれっと登記や登録の申請の際に添付書類として提出すればまず間違いなく申請手続きは可能ということになります(笑)

もっとも申請人が成年被後見人であることが発覚した場合は登記や登録の抹消という面倒な事態に発展するリスクがあります。

結局のところ従来通り法定代理人たる後見人の書類をもって手続きを行うのが一番無難といえそうです。