相続をテーマに扱った今注目の漫画「相続探偵」
元弁護士で現在は探偵を営む灰江七生が持ち前の法律知識を駆使して数々の相続トラブルを解決していくという極上ミステリー作品です。

ストーリーもさることながら法律的な知識もしっかりと学ぶことのできる作品でそのクオリティの高さから早くもドラマ化も間違いなしという声まで聞こえています。

そんな相続探偵。
8月23日に待望の第2巻が発売されました。

今回はそんな第2巻収録のエピソード「借り逃げ、どえりゃあアカン!」のネタバレ感想考察(あらすじネタバレはかなりの控えめです)及び相続放棄についての豆知識をまとめていきたいと思います。

➀相続探偵2巻収録 「借り逃げ、どえりゃあアカン!」あらすじ

今回の依頼人はプログラマーの赤羽桂。

大学時代の恩師である伊予島彰に500万円を貸していたところ伊予島が死亡したことを知る。
そこで恩師を死をきっかけに貸していた500万円を返却してもらおうと伊予島の息子である英徳・正尚兄弟(以下伊予島兄弟)に返済を迫ったところなんと伊予島兄弟は相続放棄をするつもりであり500万円を返済するつもりはないという・・・

このことが妻にばれてしまい500万円返してもらえなければ離婚を突き付けられた赤羽・・・
そんな赤羽が最後の手段として灰江のもとにやってきたのだ・・・

赤羽の依頼に基づき動き出す灰江らであったが伊予島兄弟はなかなか手強く隙を見つけることができない・・・

しかし灰江には何か策がある様子・・・
1巻に登場し灰江と対決した弁護士の福士も灰江らに加わり最強チームが誕生!!

伊予島兄弟に挑む!!(おわり)

➁相続探偵2巻収録 「借り逃げ、どえりゃあアカン!」ネタバレ感想考察

詳細は後述しますが伊予島兄弟を巧みに策略にはめこみ相続放棄の無効化に成功・・・
放棄どころか相続を承認したものとして大きく事態が覆ることになりました。

不遜な態度に加えどぎつい名古屋弁が特徴だった伊予島兄弟・・・

つい最近どぎつい名古屋弁が特徴の河村たかし名古屋市長が金メダル噛みつき問題で大炎上しましたが・・・
今回のエピソードを読んで「思わず河村たかし市長を連想しスッキリした!」という読者も多いのではないでしょうか(笑)

さてここからは相続放棄について今回のエピソードを踏まえた考察記事を書いていきたいと思います。




⓷相続探偵に学ぶ相続放棄・・・相続人が相続権を失う制度は3つある!

相続人が相続権を失う制度は民法上以下のとおり3つ存在します。

1相続欠格・・・相続人に一定の重大な非行がある場合に強制的に相続権を剥奪するというもの

2相続排除・・・被相続人が生前に遺言などで「長男だけにはなにも相続させない」など指定することで指定した相続人から相続権を奪う制度

3相続放棄・・・相続人自らが相続権を放棄する制度

※相続探偵2巻には「鎌倉の屋敷と兄弟と」というエピソードも収録されていますが、こちらが相続欠格を扱ったお話でした。(この相続欠格を扱ったお話についてはコチラ!
この2巻1冊だけで相続人が相続権を失う3つの制度の内2つも学ぶことができるということになりますね。

私も自動車登録官時代に数多くの相続案件を担当してきましたがこの3つの中で圧倒的に多いのが相続放棄の案件です。(・・・というより相続欠格・相続排除の案件はみたことがありません

一般的に相続というと財産を譲り受けるというプラスの面しか思い浮かばない方が多いのではないかと思います。
しかし相続は被相続人の有する権利義務の一切を承継するものであるという「一般承継」に該当するものという位置づけになっています。

「権利義務の一切」ということは被相続人のもっているプラスのもの(財産)はもちろんマイナスのもの(借金などの債務)も相続人が引き継ぐということ・・・
つまり被相続人が明らかに莫大な額の借金を残して死亡してしまったという場合はその被相続人を相続するということは莫大な額の借金も受け継ぐということになります。

このような場合相続しても相続人にとってはデメリットしかないために相続人が自発的に相続権を放棄することができるようになっています。

しかしせっかく相続放棄をしても今回の相続探偵のように「相続したもの」とみなされてしまうことがあります。

⓸相続探偵に学ぶ相続放棄・・・相続放棄する人は民法921条に要注意!

相続放棄の手続きは家庭裁判所でしかるべき手続きを行う必要があります。
そんな相続放棄を考えている人ならびにすでに手続きを行った人が必ず注意しなくてはいけない民法の条文が存在します。

それが民法の921条です。(以下そのまま条文を掲載します。)

〇民法第921条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。

一  相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条 に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。

二  相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。

三  相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相
続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

単純承認というのは相続することを承認するということなのですがこの条文により「一~三」に該当した場合は強制的に相続を承認したという扱いになってしまいます。

今回の相続探偵「借り逃げ、どえりゃあアカン!」では伊予島兄弟は灰江の策により家庭裁判所での相続放棄手続き前に「一」に該当することになったため相続放棄ができなくなってしまいました。

また「三」にも注目です。

これは家庭裁判所で相続放棄の手続きが終わった後の条文です。
家庭裁判所で晴れて相続放棄が認められ手続きが終了しても被相続人の財産を隠していた場合などはせっかくの相続放棄手続きも無意味なものとなってしまいます

・・・まあ「悪いことはするな」ということですね(笑)

以上相続探偵2巻 「借り逃げ、どえりゃあアカン!」ネタバレ感想考察まとめでした!!