本ブログで度々お話していますが私は自動車の名義変更などを行う自動車登録官として20年ほど勤務していた元国家公務員です。
このブログではよく元職場に対して元上司や不正と思われることを告発していますが敵視しているのはあくまでも組織であり仲の良かった職員とはいまでも付き合いがあります。
先日そんな現役職員の一人から自動車の抵当権に関して大変興味深い意見照会がありました。
以下「自動車の抵当権 担保自動車を入れ替える際の登録免許税はいくら必要?」としてまとめていきたいと思います。
目次
➀自動車の抵当権 担保自動車を入れ替える際の手続きは設定と抹消で処理する!
本記事のタイトルにもありますが今回私に意見照会がきた内容は「自動車の抵当権で担保となる自動車を入れ替える場合の登録免許税」について・・・その中でも新たな抵当権を設定する担保自動車に課される登録免許税額についてです。
まずその大前提としてですがこの担保自動車の入れ替え手続きはどのように行うのか?
これは自動車の抵当権で担保となる自動車を入れ替える場合は➀既存の抵当権設定自動車に対して「抵当権の抹消」を➁入れ替わりに抵当権を設定する自動車に対して「抵当権の設定」を行います。
➁自動車の抵当権 担保自動車を入れ替える際の登録免許税は?
登録免許税法による自動車の抵当権の設定時に課される登録免許税額は債権額✕1000分の3となっています。
ですので「ん?そんなの法律通り債権額✕1000分の3の金額を徴収すればいいのでは?」と思いますよね。
実は私も「なんでこんなこと聞いてくるんだ?」と思いました(笑)
しかしここで私の知り合いが引っかかりを覚えたのが「担保物を入れ替えることで共同抵当権の関係が発生する場合がありうるのではないか」ということときいて思わず「なるほど」と感心することになったのでした。
⓷自動車の抵当権 共同抵当権となる場合の設定時の登録免許税
ここで少し自動車の共同抵当権の概要とその登録免許税額について簡単にお話します。
1つの債権に対して複数の自動車に担保として抵当権を設定することを自動車の共同抵当権と言います。
この自動車の共同抵当権が発生するパターンは以下の2通りあります。
パターン1・・・最初に抵当権を設定するときから複数台まとめて抵当権を設定するパターン。
パターン2・・・最初に抵当権を設定しその後で追加担保として抵当権を設定するパターンです。
この場合登録免許税法13条によってパターン1については複数台まとめて1つの抵当権とみなし台数関係なく債権額✕1000分の3の登録免許税額が必要となります。
一方パターン2の場合は追加担保として設定する自動車抵当権の登録免許税額は1台毎1500円となっています。
※参考条文 登録免許税法第13条
・第1項
一の登記官署等において、同時の申請(官庁又は公署の嘱託を含む。次項において同じ。)により同一の債権のために数個の不動産等に関する権利を目的とする先取特権、質権又は抵当権の保存若しくは設定、移転又は信託の登記又は登録(以下この条において「抵当権等の設定登記等」という。)を受ける場合には、これらの抵当権等の設定登記等を一の抵当権等の設定登記等とみなして、この法律の規定を適用する。この場合において、当該抵当権等の設定登記等に係る不動産等に関する権利の種類の別により別表第一に掲げる税率が異なるときは、そのうち最も低い税率をもつて当該抵当権等の設定登記等の登録免許税の税率とする。
・第2項
同一の債権のために数個の不動産等に関する権利を目的とする抵当権等の設定登記等を受ける場合において、当該抵当権等の設定登記等の申請が最初の申請以外のものであるときは、当該抵当権等の設定登記等に係る登録免許税の課税標準及び税率は、当該抵当権等の設定登記等がこの項の規定に該当するものであることを証する財務省令で定める書類を添付して当該抵当権等の設定登記等の申請をするものに限り、当該抵当権等の設定登記等に係る不動産等に関する権利の件数一件につき千五百円とする。
⓸自動車の抵当権 担保自動車の入れ替えはパターンごとに免許税額が違う!
ではこれらを踏まえて今回の自動車の抵当権で担保自動車を入れ替える際の登録免許税額をみていきましょう!
まず担保自動車を総入れ替えする場合は債権額✕1000分の3の登録免許税額が必要となります。
担保の総入れ替えなので元々抵当権を設定していた自動車と新たに抵当権を設定する自動車は共同抵当権の関係にはなりません。(例 AからBに入れ替え ABをCDに入れ替え)
しかし担保自動車を一部入れ替える場合は注意が必要です。
このケースの場合はすでに既存の抵当権が共同抵当権ということになるわけですが・・・このうちの一部を入れ替えるということは新たに入れ替えにより抵当権を設定する自動車は元々の抵当権設定自動車と共同抵当権が成立することになります。
例えば100万円の債権に対してA・Bの自動車に共同抵当権が設定してある状態からBをCに入れ替える場合は新たに抵当権を設定するCは元々抵当権が設定してあるAとともに100万円の債権を担保する共同抵当権の関係になりますよね。
そのためこの場合の登録免許税額は1台につき1500円ということになるのです!
⓹「自動車の抵当権 担保自動車を入れ替える際の抵当権設定の登録免許税はいくら必要?」まとめ
以上「自動車の抵当権 担保自動車を入れ替える際の抵当権設定の登録免許税はいくら必要?」でした。
上述の考えは私の知り合いが自身の考えとしてまとめてきた考えなのですが私も登録免許税法の条文や共同抵当権の概念から全く認識が一致しました!
しかし・・・冒頭の通りこのてんしっかり言及しているサイトがいくら探しても見つかりません。
正直自信はあるものの万一ということもあります。
意外なことに公務員の方の読者も多い本ブログ(笑)
もし現役法務局職員の方で不動産登記に明るい方がいれば是非登記先例など資料とともにご教示いただければ幸いです。