民法上の意思能力がない場合は印鑑登録ができません。
(そのため従来意思能力がないとされる成年被後見人については印鑑登録が認められていませんでした。)
しかしこのてん総務省が令和元年にこれまでの考え方を一新する見解を発表し成年被後見人についても印鑑登録が可能になりました。
ではこの印鑑登録を行った成年被後見人は意思能力を有するという扱いになるのでしょうか?
総務省に確認を行いました!
以下「成年被後見人の印鑑証明書 印鑑登録した成年被後見人に意思能力はある?総務省に確認してみた!」としてその調査結果をまとめていきます。
目次
➀総務省が見解を一新!成年被後見人の印鑑登録が可能に!
冒頭でもお話ししましたが講学上意思能力がないとされる成年被後見人については従来印鑑登録が認められていませんでした。
しかしこの取り扱いを定めた総務省は令和元年11月にそれまでの見解を一新!
「印鑑登録証明事務処理要領の一部改正について(令和元年11月19日付け総行住第119号)による通達改正により一定の要件を満たした場合は成年被後見人についても印鑑登録が可能となったのです!
➁成年被後見人の印鑑登録が可能となる総務省の要件は?
では総務省のいう成年被後見人の印鑑登録が可能となる一定の要件とは一体何なのでしょうか?
それは総務省が各都道府県あてに発出した「印鑑登録証明事務処理要領の一部改正に係る質疑応答について」(令和元年11月19日付総行住第120号)のなかで以下の通り示されています。
成年被後見人から印鑑の登録の申請を受けた場合において法定代理人が同行しておりかつ当該成年被後見人本人による申請があるときは当該成年被後見人は意思能力を有するものとして印鑑の登録の申請を受け付けることとして差し支えない。
⓷成年被後見人からの登記登録申請は可能?
さてこの総務省の見解・・・よくよく読むと「印鑑登録が認められた成年被後見人は意思能力を有している」ものとして読み取ることができますよね。
ここで問題となってくるのが「印鑑登録が認められた成年被後見人は不動産登記申請や自動車の登録申請も可能になったのか?」ということです。
登記や登録申請を行うためには意思能力が必要とされているところ従来は成年被後見人については意思能力がないため成年被後見人からの申請は一律で不可とされ代わりに成年後見人が被後見人の法定代理人として申請を行っていました。
しかし今回の総務省の「意思能力があれば印鑑登録をしてもよい」とする見解が出されたことで成年被後見人からの登記登録申請が可能になったと考える余地が出てきてしまったのです。
⓸印鑑登録した成年被後見人は意思能力あり?総務省の見解は?
そこで総務省に実際に「印鑑登録をした成年被後見人は意思能力を有しているものとして扱ってよいのか?」というシンプルな質問を総務省にぶつけてみました!
そして返ってきた答えが以下の内容です。
令和元年11月19日付け総行住第120号の質疑応答は意思能力を有していない成年被後見人ご本人から印鑑登録の申請があった場合であっても一律に申請を拒否するのではなく成年後見人が同行しているときはその印鑑登録の申請を受理しても差し支えないという解釈をお示ししたものです。
したがいまして「成年被後見人に印鑑証明書が発行された場合はイコールその被後見人は意思能力を有する被後見人であることの公の証明でもある」という解釈ではございません。
つまり質疑応答集上では「意思能力があるものとして印鑑登録をして差し支えない」としながらも「印鑑登録された成年被後見人=意思能力を有する」という解釈にはならないという回答でした。
⓹「成年被後見人の印鑑証明書 印鑑登録した成年被後見人に意思能力はある?総務省に確認してみた!」まとめ
以上「成年被後見人の印鑑証明書 印鑑登録した成年被後見人に意思能力はある?総務省に確認してみた!」でした。
結局のところ成年被後見人に印鑑登録ができるようになったとはいえ意思能力を有していることの証明にはなりえません。
そのため成年被後見人本人による登記登録申請はこれまで通り認められないということで決着しました。
今回の総務省の見解の見直しですが・・・はたして成年被後見人本人の印鑑登録を認めたことで何か意義はあったのでしょうか?