おととしの10月に兵庫県で発生した県職員による排水弁閉め忘れにより水道水が流れ続けてしまいその総額料金が約600万円にまでのぼってしまったという事件。

600万円というその金額もさることながら排水弁を閉め忘れた職員に対して料金の半額にあたる300万円を個人負担させたことが大きなニュースになっていますよね。

昨今公務員によるミスによる不祥事はマスコミによる格好のネタとして取り扱われるケースが増えていますがこと今回の件に限ってはミスをした公務員よりも半額とはいえミスをした公務員に弁済を求めたという点に大きな関心が集まっています。

今日はこのニュースに関して「兵庫県 水道料金自腹弁済は究極のパワハラ!」についてまとめたいと思います。




➀兵庫県水道料金自腹事件・・・何故発生した?

今回の事件が何故発生したのか?
まずその経緯についてみていきましょう。

兵庫県庁西館の受水槽の定期清掃を行うため一度排水弁を開放。
これにより水を流し終えたのち委託業者が正装を実施。
そして清掃後再び水をためるため排水弁を閉めたのちに水を貯水するというのが本来あるべき流れです。

ところが今回の兵庫県のケース。
本来弁を閉めるのは業社が行うべきところ清掃に立ち会った職員が「自分が弁を閉めておく」と言ったにもかかわらず閉め忘れてしまったとのことでこれにより事が発覚するまで受水槽に水が流れ続けてしまい結果約600万円と言う高額の水道料金額に発展してしまったというわけです。

ちなみにこの600万円と言うお金はこの兵庫県庁西館の約半年分に相当する金額とのことです。

➁兵庫県水道料金自腹事件・・・公務員の業務上の損害についての法律や判例は?

さて今回公務員のミスにより大損害が発生してしまったわけですが、本来公務員の業務上のミスにより損害が発生した場合の法律として国家賠償法があります。

公務員試験志望の方で行政法を選択された方やこれから選択される方は必須の試験科目ですよね?
以下具体的な条文を見ていきましょう!

国家賠償法第一条 


・1項 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
 
・2項 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。

すなわち公務員が職務上行った行為につき損害が発生した場合はその職務として行った行為が損害をおこすための意図的なものであった場合、そしてうっかりミスによって損害が発生してしまった場合に国や地方自治体が組織として培養責任を負うというのが第1項。

そしてさらにその職員に損害についての意図的な悪意があった場合はもちろん重大な過失(1項の過失よりもさらに大きな重大な過失となっているのが大きなポイントです。)があった場合は損害を発生させた職員個人に損害を建て替えた国や地方自治体の組織が支払いを迫ることができるというのが第2項です。

こう規定することで損害を発生させた職員にはまず個人負担をしなくていいカラクリになっているんですよね。

また実際公務員の職務上の損害について最高裁の以下の判例があります。

最高裁判例

「公務員の職務行為に基づく損害については、国又は公共団体が賠償の責に任じ、職務の執行に当たった公務員は、行政機関としての地位においても、個人としても、被害者に対しその責任を負担するものではない。」

単に条文上の規定だけでなく実際裁判沙汰に発展したとしてもよほどのことがない限り公務員の個人が責任追及されることは実際はありえないという裏付け判例と言えるでしょう。

⓷兵庫県水道料金自腹事件・・・ネット上の反応は?

さて上述のように公務員の職務上の行為を起因とした損害については少なくともその損害を発生させた公務員個人に責任がいくことは故意または重大な過失が存在しない限りありません。

今回の排水弁の閉め忘れがこの重大な過失にあたり公務員個人が責任を負うかどうかは本来裁判により争われるべき争点でしょう。(職員は清掃業者に「弁は自分が閉めておく」と話していたそうです。)

もっとも今回のケースは特に公務員個人が不服として裁判に発展することもなくすんなり支払いに応じたようです。

しかし300万円と言う金額は大きいですよね。

この職員個人に半額の金銭的負担を求めた兵庫県の対応にはネット上大きな批判的な意見が寄せられています。

以下いくつか紹介したいと思います。

兵庫県水道料金自腹問題ネットの意見まとめ


・業務上の過失なので、担当者個人だけの責任ではなく、監督責任のある上司を含めた組織の責任。担当者に弁償させるなら、上司も弁償すべき。最高責任者である知事にも責任はあるはず。ちょっと無責任な気がする。

・いやいや、いくら過失があると言っても、1人に300万円も負担させるのはおかしいでしょうよ。
部下の責任は上司の責任でもある訳だし、1人に責任押し付けるのはおかしいと思う。

・今回の件は点検に立ち会われた職員だけの責任なのでしょうか?この方のチェックをされる方は居ないのでしょうか?
人間は間違える動物です。でも間違いを正せるし、チェック出来る動物です。
作業時間のラスト30分は必ずやってきた作業に忘れや戻し忘れが無いかチェックをする心掛けが必要だと部下には教えています。

⓸「兵庫県 水道料金自腹弁済は究極のパワハラ!」まとめ

以上「兵庫県 水道料金自腹弁済は究極のパワハラ!」についてまとめました。

この職員は50台の職員ということですがおそらく年収は7~800万くらいではないでしょうか?(少なくとも国家公務員出先機関職員ならばそれくらいの年収です。)

その4割ほどの金額を個人に弁済させるという今回の兵庫県に対応には多くの批判的な意見が寄せられています。

おそらく兵庫県側としてはこの排水弁閉め忘れが重大な過失にあたると判断して弁済を求めたというところではないかと推測しますがこれが重大な過失にあたるかどうかは本来裁判の場で認定すべき案件。

それすらなく職員個人へ300万円もの金額を弁済させた兵庫県の対応は究極のパワハラと言えるのではないでしょうか?