私は元国家公務員(車検場職員)で現在はアルバイト感覚で法律関係の仕事をしています。
国家公務員時代は自動車の登録官として多くの相続を原因とした所有権移転手続きに携わってきました。

そして現在の仕事柄相続に関する業務も多く中でも相続関係のトラブルを目にすることが多々あります。
また遺言書なども目にする機会が多いのですが「長男の〇〇だけには自分の財産を絶対に何も相続させない」といった内容の遺言書も目にすることも非常に多いです。

さて実は私自身もかつて母方の祖父が死亡した際の相続で祖父がとんでもない公正証書遺言を残していたおかげでトラブルに見舞われあやうく実家を売り払わなくてはいけない寸前に陥りました。
母親などは実家を手放すことも覚悟していたようです。

しかし仕事柄一般人よりは相続に精通していた私。
「遺留分」という奥の手を使うことでなんとか実家を守り抜いた経験があります。

そこで今日はそんな私の体験談について「相続トラブル 遺留分を主張して悪質な公正証書遺言から実家を守った話」 としてまとめてみたいと思います。




➀祖父の残した公正証書遺言「私の母親には一切の財産を相続させない」

まず私の母方の祖父の家族構成からお話しすると妻(私の祖母)、そして娘が3人(私の母親と叔母が2名)といったかたちになります。

そして祖父が亡くなる数年前に私の父親が祖父から多額の借金をしていたことが発覚。(正確には祖父が父親の連帯保証人になっていた。)
さらには私の実家及び祖父母宅も金融機関に抵当権を設定されており私の実家はもちろん祖父母宅もあわや差押え寸前と言うところまで追い詰められたのでした。

このときは私がなくなく貯金から500万円支払うことでなんとか決着。(当時30歳。貯金目標額の1000万円を貯めたばかりでした。余談ですがとても悔しかったのを覚えています。)

しかし当然のごとくこの件がきっかけで私の母親と叔母2名の仲は断絶してしまいます。

そしてそれから数年後祖父が他界するのですが・・・葬儀終了後私と私の母親の前で叔母2名が祖父の公正証書遺言書のコピーを渡してきました。

そして中には「私の母親には一切の財産を相続させない」と記載してあったのです。

➁公正証書遺言がきっかけであわや実家を追い出されることに!

実は私の母親も父の借金の関係で小原に迷惑をかけた手前基本的には自主的に相続放棄をする気でいました。
それならば「私の母親に一切の財産を相続させない」旨の遺言書を祖父が残していたとしても問題はないのではないかと思われますよね。

実は1つだけ大問題がありました。
それが私の実家のことです。

私の実家は建物は父親名義だったのですが、土地は祖父名義のままだったのです。
そして公正証書遺言ではあろうことかその土地は仲が険悪になってしまった叔母に相続させると記載されていました。

今までは土地と建物が別々の名義でも特に問題はなかったわけですが土地の持ち主が仲が険悪になった叔母ということになるとその土地上にある私の実家は非常に不安定な立場となります。

そして案の定弁護士を選任したうえで「建物を早急に明け渡すように」と内容証明書を送付してきたのです。

⓷魔法の言葉「遺留分」で反撃開始!!

さて私の母親などは祖父の公正証書遺言。
さらには叔母側が弁護士を選任してきたこともあり実家を手放す覚悟を決めていたようです。

しかしこの叔母側の姿勢に我慢がならなかったのがほかならぬ私です。

上述の父親の借金も私の全く知らないところで行われていた話。
「お前が息子なのだから不足分はお前が支払え」と連日のように電話をしておきながら自分たちは止める機会があったのにもかかわらず一切支払わない。

また私の祖父は農業をやっていたのですが私一家がその手伝いを毎週行う一方で2人の叔母はほとんど手伝いをしないといった過去の怒りもあったことから反撃に出ることにしました。

それが『遺留分』です。

実は相続人には必ず一定分以上の相続分が保証されています。
これを遺留分と言うのですがこれは遺言を残した遺言者が「〇〇には一切の財産を相続させない」と言う内容の遺言を残していたとしても関係ありません。

そして私の祖父の相続の場合私の母親の遺留分は祖父の全財産の12分の1。(今回のケースの場合祖父の相続人全体での遺留分は祖父の全財産の2分の1。祖母が半分の4分の1の遺留分を有し残りの4分の1の遺留分を叔母2人と私の母親が3等分して12分の1ずつ有するかたちとなります。)

私の実家の土地の価額は叔母からもらった公正証書遺言の財産目録から換算すると12分の1もありませんでした。

そこで私の母親の遺留分として遺言書上叔母が相続するとされている実家の土地を主張するという反撃を試みたのです。

⓸争いは調停へ!そして更なる反撃。公正証書遺言を覆せ!

さて遺留分を主張し実家の土地を母親が相続するよう叔母側に主張しましたが当然のごとく先方は受け入れません。

そこでこのような場合家庭裁判所へ申し立てを行うことで調停と言う手続きを行うことができます。

調停と言うのは当事者との間に利害関係を有しない公平・中立な第三者である調停人が、紛争を抱えた当事者の間に入り、和解の成立に向けて協力する制度のこと。

これにより月1程度で私と母親、そして叔母と弁護士、そして調停人が話し合いを進めていくかたちで折り合いをつけていくことになりました。

そしてこの調停にあたり秘密兵器として準備していたものがあります。
それは私の祖父が生前入院していた病院の診断書とカルテです。

今回の相続トラブルは祖父の公正証書遺言が発端となっているわけですが、実はそもそもこの遺言書自体に私は疑念を抱いていました。

というのも遺言書にはその作成日が記載されているのですが、祖父は父親の借金以降急激に元気をなくし重度の痴ほう症のような状態になっておりとても財産の1つ1つを誰に相続させるという認識能力があったとは思えなかったからです。

そこでこちらも弁護士に頼み弁護士法23条に基づく照会を祖父が生前入院していた病院に行うことで遺言書作成日直近のカルテと診断書を入手。
すると診断書の所見には「事理弁識能力ほぼなし」と明確に書かれていたのです。

そして調停の場ではこちら側は➀通常の遺留分よりも少ない財産で手を打とうとしていること。➁実家の土地は実質的には我われの者であり母親が相続することになってもそちらに何ら影響はないこと⓷祖母の相続の際は遺留分を放棄すること⓸これで手を打たないならば病院から入手した診断書とカルテをもとに公正証書遺言を偽造したものとして徹底的に争うことを主張。(もし偽造ということになれば犯罪となります。)

叔母側も当初は強気の姿勢だったものの私が診断書及びカルテを提示してからは「マズイ・・・」と思うところがあったのか勢いが明らかになくなり、結局実家の土地は私の母親が相続することでうまく調停が成立したのでした。

⓹「相続トラブル 遺留分を主張して悪質な公正証書遺言から実家を守った話」まとめ

以上大変長くなってしまいましたが「相続トラブル 遺留分を主張して悪質な公正証書遺言から実家を守った話」のまとめでした。

この『遺留分』ですが実務をやっていても思うのですが実に知らない人が多い!(現に私の母親も知りませんでした。)

やはり「〇〇には一切の財産を相続させない」という一言があまりに強烈なためかそのまま「何ももらえないものだ・・・」とあきらめてしまう方が多いようです。

また遺留分の請求には時効があり相続が開始したときから1年を経過すると主張する権利がなくなるため遺留分の存在を知った時には「時すでに遅し」ということも多々あるようです。

私は仕事柄たまたま遺留分と言うものを知っていたためなんとか相続トラブルを回避することができましたが、もし知らなかったとしたらと考えるとゾッとします。(当時から約7年が経過しますがひょっとしたら帰る実家がなくなっていたかもしれません。)

私は本ブログで国家公務員退職後も当時のパワハラ上司などを告発しており(詳細はコチラ!)当時の職場には恨みに似た感情しかないのですが唯一「車検場で働いていてよかった・・・」と思うのがこういった相続の知識を習得することができたということです。

本当に相続に関する知識は知っておいて損はありません。

最後になりますがこの記事が同じようなトラブルで苦しんでいる方に何らかの形で役立ってくれれば非常に嬉しく思います。